IMG_2313山形交響楽団 第273回定期演奏会
2018年 11月17日-18日
山形テルサホール 
<プログラム>
ハイドン作曲『天地創造』

指揮:鈴木秀美
ガブリエル&エヴァ:中江早希(Sop.)
ウリエル:中嶋克彦(Ten.)
ラファエル&アダム:氷見健一郎(Bs.)
チェンバロ:上尾直毅
合唱:アマデウス・コア

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昨年の鈴木秀美さん指揮の新日本フィルを聞き逃したということもあり、生で聴いたことがなかったこの曲。昨年に今年度の定期の曲目が発表されてからずっと楽しみにしていました。

マニアックな話をしますよ。(和声学を修めた方には初歩レベルですが)
和声学で「連続8度はダメ」「外声・跳躍の並達はやっちゃダメ」「Ⅱ→Ⅳの進行はダメ」と言われ(←本に。師匠にではなく。)、自分のレッスンでも「ダメ」と言い続けているのにこの曲ではバシバシ出てきます。けど、なんの違和感もありません。歌詞を強調したい、物事を言い切りたいところに使っているように思います。例えば1b.アリアと合唱の33小節目「第1の日は生じた」とか。しかしこの場面では Vn.が三度上の音を鳴らしていますから、連続8度の硬さがあからさまには響きません。歌詞を強調しつつ上手に隠されている感じ。うまーーい。12b.二重唱と合唱の330小節〜「大地も天もあなたを崇拝しています」も、繰り返し部分として強調されていますね。独特のワクワク感が出ます。

IMG_2314冒頭の混沌を表す音楽や、小鳥や動物を表す音楽。のどかさを感じるファゴットとフルートの2オクターブ離れたメロディ。ラファエルが「塵」と歌うと細かく砕けるオーケストラ。ハイドンのセンスがいっぱい詰まっています。

ポリフォニー、ホモフォニーともに十分発達し、楽器も改良を重ね、強力なスポンサーもちゃんといた18世紀末にはこんな音楽が生まれていたのですね。誰もが納得する素晴らしい芸術品です。

今だったらどうかしら。スポンサーが難点かもね。だいたいこんな規模の曲を使うようなイベントだったらオーケストラを使わないだろうし。オリンピックの開会式とか。これからもオーケストラは古い曲をやっていくしかないんでしょうか?演奏家の皆さんも、関わるスタッフの皆さんも現代を生きているのに、オーケストラはどうしてなかなか「今」を歌うことができないんでしょうか。日本人はもともと古いものをとても大事にする民族だから、これはこれで良いのでしょうけど。

「『光あれ!』すると光が現れた」の後の舞台照明が明るくなる演出もブラボーでしたし、コントラファゴットの存在感にびっくりしました。チェンバロとチェロの通奏低音が聴けて満足です。上尾さん、小川さん、ブラボーでした。金管セクションの皆様のピリオド楽器によるアンサンブルを有り難く拝聴しました。合唱を潰さずしかもクリアな響き、素晴らしかったです。それと、ホール照明が薄く点いていて、手元にある歌詞(と楽譜)を読めるのがありがたかったです。

指揮の秀美さん、ソリストの皆さん、合唱のアマデウス・コア、オーケストラの皆さんの音楽を堪能しました。ありがとうございました。おつかれさまでした!